根強いファンを持つ純愛ドラマの傑作『冬のソナタ』。あれから約10年、ユン・ソクホ監督と脚本家のオ・スヨンが再びタッグを組むことで、韓国でも大きな話題を呼んだ最新作『ラブレイン』が、ついに日本に上陸する。『春のワルツ』『夏の香り』『秋の童話』といった四季シリーズは、本国・韓国はもちろん日本でも大ヒット。“韓流ブーム”という言葉を生み出し、ペ・ヨンジュンをはじめとする数々の俳優をアジアのスターへと押し上げた、記念碑的なドラマだ。韓国を代表するヒットメイカーであるユン・ソクホ監督が今回、ドラマの舞台として選んだのは、"1970年代"と"現代"というふたつの時代。監督ならではの細やかな感性とまるで水彩画を思わせるやわらかなタッチの映像美を通して、時代を超えてつながっていく“運命的な愛”を描くことに挑んでいる。大学時代に出会い、若き日の恋を成就させることができなかったイナとユニ。そしてイナの息子であるジュンと、ユニの娘、ハナ。彼らの思いはどこに向かっていくのか―。乾いた心に潤いを与え、しっとりと落ち着かせてくれる雨。出会いや別れ、人生のどんなときにもどんな人にも、等しく降り注ぐ雨。そんな雨のイメージを美しくちりばめながら、観る者の心の奥底に愛の意味を問いかける『ラブレイン』。スピード感あふれる展開で興味を引きつける韓流ドラマとは一線を画す、じっくりと観たいクラシカルでロマンチックなラブストーリーが誕生した。
チャン・グンソクとユナ(少女時代)という日本でも爆発的な人気を誇る若い俳優陣がキャスティングされたことも、大きな話題のひとつ。ふたつの時代を舞台にしたこのドラマでグンソクとユナは、現代を生きる男女と、それぞれの父親、母親の若き日という“一人二役”に挑戦している。グンソクが演じるのは韓国大学美術学科に通う、天才的な絵の才能を持つ美大生のイナと、その息子である毒舌家で自信家のフォトグラファー、ジュン。ジュン役では過去の出演作品だけでなく、歌手活動やCM等でも見せてきたカリスマ性あふれる魅力を発揮。イナ役では内気さと繊細さを表現し、これまでとは違う新しい魅力を開花させた。約2年ぶりのドラマ出演となるユナは、韓国大学の家政科に通う清楚で可憐なユニ、弾ける笑顔で周りの人たちを明るくするガーデナー、ハナの二役をキュートなルックスを生かして好演している。韓国大学の医学生に映画『親切なクムジャさん』のキム・シフ、2012年のイナに『トンイ』のチョン・ジニョン、ユニに『エデンの東』のイ・ミスクら実力派が顔を揃え、ハナの友人であるガーデナーにモデル出身で『お嬢さまをお願い』で注目を集めた期待の新星、キム・ヨングァンがキャスティングされている。
ふたつの時代を舞台に、“アナログな愛とデジタルな愛”、“若者の愛と大人の愛”、その両方の愛の形を描き出していることも、このドラマのチャレンジングな見どころとなっている。70年代の大学生を演じるグンソクはおなじみのアイラインを封印して、アコースティックギターがよく似合うやわらかな雰囲気に。ユナはストレートの黒髪で清楚なファッションに身を包み、慎ましい女性像を体現。グンソクは70年代の映画やニュース映像を観たり、ローリング・ストーンズの音楽を聞いたりしながら、時代の空気をつかんでいったと語る。撮影や演出にも違いがあり、現代のパートではどこか殺伐とした不安な感情や孤独感を表現するために、手持ちのカメラを多用してセリフも多め。音楽もエレクトリック・サウンドが入る曲を意図的に採用している。一方、70年代のシーンでは音楽はクラシックを中心に選曲し、望遠レンズを使うことによって、動きの少ない静かな空気を作り出している。すべてがデジタル化されて、あらゆることが猛スピードで進んでいく現代。まだアナログの香りが残る、もどかしいほどにゆったりと時が流れていた70年代。ふたつの時代の違いを描き出しながら、時代の波にさらされても色あせることのない“普遍的な愛”が、このドラマには描かれている。
ユン・ソクホ監督の持ち味といえば、ワンシーンだけでも監督の作品だとわかるような透明感あふれる映像美だ。チャン・グンソクとユナが「撮影時にモニターで見るだけでも色彩感覚や風景が生かされた美しい映像で、それを見ると安心して俳優たちは演技に集中できた」と語るように、ディテールにまでこだわった映像がロマンチックなストーリーをより盛り上げている。また、ジュンとハナが出会う場所として、北海道でもロケを敢行。ユン・ソクホ監督はアシスタントディレクターだった頃、日本に留学経験のある先輩からのおすすめでドラマ『北の国から』を観て以来、倉本聰の大ファン。「自然に対する愛、家族に対する愛など、倉本作品からはたくさんの影響を受けている」と語る監督は北海道にも何度も訪れており、富良野の美しい景色をドラマで使ってみたいという願いが『ラブレイン』の撮影で果たされることになった。富良野といえば夏のラベンダー畑のイメージが強いだけに、一面の銀世界や雪が降り積もる露天風呂など、日本人にとっても雪景色の映像が新鮮に感じられるに違いない。